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2019

蕏塚さやかのSERPENTS図鑑 vol.4足立大樹


「みんなのダチ」こと足立大樹。彼が挑越してきた運命とはー



2018年11月11日。一橋大学男子ラクロス部SERPENTSは創部以来初となる1部2部入替戦を戦っていた。相手は明治学院。2部Aブロック1位通過の勢いに呑まれそうになるも、10-6で勝利し、1部残留を果たした。その一角で、明治学院のエース、当時4年AT#7西雄己選手と肩を抱き合う男がいた。


足立大樹。4年G、背番号は93。彼はSERPENTSのムードメーカーであり、イケメンランキング(部内実施)第2位、つまり「イケメンで楽しいやつ」。だが時折見せる真剣な表情、そこには彼の内に秘められた様々な想いが交錯していた。


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中学は私立の桐朋中学に入学。2年から高校卒業までアメリカに滞在した。高校ではテニス部に所属し、州大会優勝(日本でいう県大会優勝)を目指した。アメリカの高校は4年制であり、3年のときにトライアウトに合格し、1軍に補欠で入った。主力が怪我したことを機にダブルスの試合に抜擢。

その年、州大会の決勝進出を果たす。まさか自分が活躍できるとは思ってなかった。


『お前なら絶対いけると思ってた』


コーチに言われた言葉だ。


「自分が自分の実力を信じていないのに、他の人がこんなに信じてくれることってあるんだ」


応援してくれる人のため、次こそは優勝を目指そうと意気込んだ翌シーズン。試合の途中で足に違和感を感じ、準々決勝敗退。


「全てがうざかった。なんで俺だけこうなるの。スポーツを真剣にやるのは終わったなって思った」


日本に帰国し、大学は一橋に。スポーツをやる気はなかったが、テニスサークルの新歓には行った。テニスをするのは楽しかった。しかも少しできるだけでもちやほやされる。自分の中で、「ここでいいや」と納得させようと、テニスサークルに入った。


彼には欠かせない存在がいる。それは親友である早稲田大学男子ラクロス部2018年引退FOer#3嶋田育巳人だ。嶋田は1年の頃から新人戦優勝、早慶戦でMVP獲得、U-22にも選抜され、日本代表選手でもある。そんな嶋田と彼はアメリカ滞在期からの仲だ。日本に帰国した今でも月に1回、多いときに週に3回会うほどの仲だ。彼が1年長くアメリカに滞在していたため、嶋田とは学年が1つ異なる。嶋田は彼が大学に入学する前からずっとラクロス部を推していた。


『お前がラクロス部入らなかったら友達やめるわ』


もうスポーツをやる気はない、とその言葉を受け流していた。


同時に2018年卒STF野村苑香さんからの新歓を受けたが、またスポーツを真剣にやることはもう二度とない、と拒み続けた。それでも最後に話を聞いて欲しいと言われ、当時4年の服部颯也さんと3人で吉祥寺のパスタ屋さんに行くことに。

《真剣にスポーツをやりたいけどできない》。そんな事情も知らずに、スポーツの新歓をしてくるラクロス部が、最初は嫌だった。だが、服部さんはすごく真剣に話を聞いてくれた。この人になら話してもいいかもしれない、と高校の頃の話をした。自然に涙が溢れてきた。すると、服部さんも目を潤ませ、野村さんは涙を流していた。


『めっちゃお前スポーツ好きじゃん。もう一回やれると思うし、それぞれにあったトレーニングとかポジションあるから、やってみないか。そんなに熱い想いがあんのにサークルはもったいない』


服部さんが強く、言ってくれた。


《もう一回、本気でスポーツをやりたい。》


そこから練習見学に行くようになり、入部をしたのは、新歓期間が落ち着いてきたGW明けだった。ラクロス部は成長できる場所だ、そう感じた。


#0後藤元、#4細井雄介、そして#93足立大樹。彼らは全員Gだ。だが、1度に出られるGは1人、ベンチに入るのは大抵、多くても2人だ。


「試合に出なくてもいいかなって、最初はそう思ってた」


2017年5月に行われたあすなろCUP。16SERPENTSは予選敗退。3人とも均等に出ようと約束していたが、彼が出るはずだった試合を迎える前に、一橋は敗退した。試合後の集合に彼の姿はなかった。トイレで、一人男泣きをした。試合に出なくてもいい、なんて嘘だった。もうこんな思いはしたくないと強く思った。


あすなろが終わった後、調子が良くなって行き、一番伸びている実感があった。だが、6月末から始まったBリーグでは細井と後藤がベンチ入り。一度も出ることができなかった。


「またあすなろと同じか」


元々G3人で始まり、想像ができていた。自分が一瞬期待してしまっただけで、悲観することはない、そういう運命だったんだ、と自分に言い聞かせた。


『お前と試合したい』


彼の親友であり、ラクロス部を知るきっかけとなった嶋田がずっと言い続けている夢だ。嶋田と同じ土俵で勝負できるのは嶋田が4年、彼が3年である18シーズンが最後のチャンス。絶対にリーグ戦に出たいという気持ちで練習に取り組んだ。結果、18シーズンのリーグ戦でベンチ入りを果たした。



「出れたことにただ満足してた。チームは高い目標を掲げているのに対して、俺は低いとこしか見えてなかった」


そんな自分がリーグ戦に出たことが、昨シーズンSERPENTS創部以来初となる下入替戦に回ってしまった原因だと思い悩んだ。だが俺が出るしかないと思い直した。


「先輩を勝たせたい」


その思いで必死に入替戦まで戦い、勝った。


そして今シーズン。試合に出る大きなモチベーションだった嶋田や、先輩はいない、同期Gは相変わらず3人、加えて1つ下には日本代表に選ばれた#16中村智がいる。より一層試合の枠を競っている。モチベーションが保てず、正直しんどいこともある。それでも、


「みんなと練習するのが好き」


だから彼は毎日、楽しそうに練習に参加し、雰囲気を盛り上げている。


「部活を辞めるのはださい。4年間通してやりたいって思って入ったのに途中でやめたら結局成長しないで終わる。そんなの入部を決めた当時の自分に申し訳ないし、絶対後悔する」





最後の砦であるゴーリー。SERPENTSの運命は彼らに託されたと言っても過言ではない。彼もまた、新たな試練を乗り越え、SERPENTSを守ってくれるだろう。


(文責:4年MG蕏塚さやか)






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