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2019

蕏塚さやかのSERPENTS図鑑Vol.3 石黒大地

チームへの貢献の仕方を模索し、見つけたのは「応援」だった。応援席を離れた今、応援歌手石黒大地は何を語るかー


リーグ戦の時、スタンド中央でメガホンを両手に人一倍大きな声で応援歌を歌い、応援を仕切っていた天然パーマの男をご存知だろうか。


彼は、4年MF#77石黒大地。

遊戯王のサイコショッカーに似ていると言われる彼の先祖は、奄美諸島を荒らしている海賊だったという(証明はされていない)。夏には焼けないように日焼け止めを欠かさない。

部員数100名を超えるSERPENTS内でもとりわけ「変わっている」と言われる彼にとっての応援とは何か。


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試合前、彼が何か本に顔を埋めていた。よく見ると「マジカルアイ」だった。小学、中学、高校とサッカーを続け、中学の頃から試合前に必ずマジカルアイを利用するように。遠近感が掴みやすくなり、落ち着くという。


12年間やっていたサッカーに満足し、大学ではスポーツをやる気はなかった。通っている整体の先生にはもうスポーツはできないだろうと言われた。だが、興味本位で男子ラクロス部を見にいく。体験や先輩の話を聞く中で、


「自分が成長できる環境がある」


ラクロスに惹かれ、入部を決意。1年生の間は学年練習が多く、コーチと同期のみんなとがむしゃらに練習した。そして2016年12月17日、新人戦のウィンター数々。数々の強豪校を倒し、16SERPENTS(現4年の代)は優勝した。最高の瞬間を経験したことに満足し、部活へのモチベーションがなくなった。辞めたいと一部の部員に漏らすこともあった。そんな彼にとある出来事が起きる。


1年生の終わりから割り振られるSERPENTSの運営班で応援班に加わることになった石黒。元々応援は好きで、いつも前の方で応援していた。応援班に入ることは希望通りだった。だが、班入りして間も無くの新歓試合。いつも仕切っている2018年卒TR伊藤顕司さん、通称いとけんさんがベンチ入り。突然仕切ることになった。


「何もできなかった」


仕切りにも慣れておらず、チャントや応援歌が今と比べて少ないこともあり、全く盛り上げることができずに終わった。新人戦の結果に満足してチームに貢献した気になっていた自分が恥ずかしくなった。


「これで終わったらかっこ悪い」


応援で貢献しなければいけないという気持ちと、伴わない実力。もどかしい思いを抱えながら新歓試合の時期はすぎた。そして迎えた、2017年の東京大学との商東戦。応援部さんが沢山来てくれ、とても盛り上げてくれたためにそれなりに形にはなった。だが何かが足りなかった。いとけんさんと相談して、部内向けの応援アンケートを実施。

集まった回答は、応援に対する文句だらけだった。このままではだめだと感じた。


そこから、応援班によるSERPENTS応援の改革が始まった。応援歌や個人チャントを増やし、応援部さんとの連携を以前よりも密に増やした。そうして迎えた17シーズン。


第1戦獨協戦。いとけんさんと仕切った。みんな沢山の応援の声を出してくれて、初めて応援がうまくいったと感じた試合だった。第2戦千葉戦。今度はいとけんさんはいなく、彼主導。新歓試合より成長した仕切りができた。


「やっと自分も貢献できるようになった」



自分が部活に前向きになっていくのを感じた。自分が頑張ると周りも一緒に応援をしてくれるのが嬉しかった。17シーズンが終わった時いとけんさんに「1年で成長したな」と言われ、心から喜んだ。シーズン終わりに怪我をして練習に一時期参加できなくなったが、後ろ向きになることはなかった。応援という形で貢献できることがあるという感覚があったからだ。応援を盛り上げたい気持ちと実力がやっと付いて来て、堂々と仕切ることができるようになった。


2018年、応援に関わるようになってから2回目の東京大学との商東戦。彼はまた応援席側にいた。対するベンチ側には、同じように1年生から一緒にやって来た同期が沢山いた。試合でも活躍していた。


「同期が沢山出て活躍しているのを見て、応援は楽しいんだけど、なんか、もやっとした」


応援で貢献できてることに満足して、プレーから逃げている。そんな自分に気づき、凹んだ。そこからもっと練習に真面目に取り組むようになった。


創部以来初となる下入替戦に回った時、


「チームの勝利には応援でしか貢献できない。だから全力で応援しよう」


そう決めた。結果、入替戦の一橋の応援席はとても盛り上がり、一部残留を果たすことができた。


それでも、リーグ戦に出ることができていない現状の不甲斐なさから、最後のシーズンこそはリーグ戦に出たい。そんな彼に浮かんだ選択肢は、


「DFMFになる」


ということだった。同期のMFはほとんどがベンチ入りを果たし、彼らを追い抜いて試合に出ることは正直難しい。自分には何ができるのか。

DFが元々好きだった彼。1年生のポジション決めの際にはロングになることも視野に入れたが、当時の育成コーチに「ショートでいいんじゃない?」と言われたことからあっさりとロングになることをやめ、MFになった。

だが、ショートでもDFとしてチームに貢献できる。そこに気づいてから、DFに力を入れるようになった。


そして今年5月に行われた、東京大学との商東戦。応援席側に彼の姿はなく、対するベンチ側に、彼はいた。フィールドでプレーをしながら応援を聞き、応援の力を実感した。


「それまでは、応援班として応援しながら、応援が力になってるし貢献してるって頭では思ってたんだけど、裏打ちするものがなくて、貢献できてるのか不安になることがあった、たまにね」


今までやって来た応援は、自分が思っていた以上にフィールドにいる選手に大きな力となっていた。とても嬉しかった。

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「ここでこの人の力が欲しいって、個人チャントを歌ってもらって応援される選手になりたい」


応援する立場から、応援される立場へ。

誰よりも応援組の辛さ、苦悩を知る男は、彼らの応援を背に、グラウンドを駆け回る。


(文責:4年MG蕏塚さやか)


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