勝利至上主義の中島拓海。
"inferior"と書かれたパーカーに隠れた強さの秘密とは。
2018年5月19日、東京大学と一橋大学との五月祭試合は5-4で一橋大学が勝利した。チームが試合に勝った喜びとは別に、自分自身のプレーに納得がいかず悔しい思いをする男がいた。
「試合に勝った喜びから数時間経って悔しさがこみ上げて来た」
そう語ったのは、今回のブログの主役である4年Foer #19中島拓海だった。
「他大のFOerにどうせ東大が勝つと思われてるだろうから、挑戦者の気持ちでガンガン攻める。楽しむ」
こう意気込んで試合に臨むも、結果は勝率3/8。そのうちの2回は相手のファウルとウイングが拾ったことによるもので、自力のみで勝つことができなかった。3Q の失点後の FO で同期の東京大学FOer#17(当時#77)の岩崎遼登選手との直接対決でもGBを拾えずに相手ポゼッションとなった。
中島拓海。一橋大学男子ラクロス部SERPENTS4年のFOer。背番号は19。入部したときに優しくしてくれた先輩がつけていた番号をそのまま譲り受けたという。趣味はクロス編み、ビリヤード、アイドルのライブに行くこと。
父の影響で小学生の時からゴルフ教室に通い始めた。大会にも出場し、大人と同じコースでプレーした。中学生の時は陸上部に属し、短距離から長距離までトラック競技はほぼ網羅した。高校生ではフェンシング部に入部し、陸上部では手の届かなかった県大会優勝を果たした。
そんな彼は、現在SERPENTSの1枚目FOerとして活躍している。
FOとは、男子ラクロスのQ開始及び得点後、審判員の笛と同時にポゼッションを奪い合うポジションだ。
まさに《一瞬に懸ける》ポジションだと言える。
そんな彼らは、3時間の練習の内、2時間以上笛に合わせてポゼッションを奪い合う練習をしている。練習後には、そのビデオをもとに研究を重ねている。
筆者は、審判ユニットに属しており、練習で笛を吹きながらビデオを撮り、ファウルについて話したりして彼らの練習に関わっている。
SERPENTSのFOerは現在4年3人、3年1人、2年1人いる。その中で中島は、1年の初めからずっとFOerであり、2年の頃から上級生チームに参加した。
そんな彼の4年間に惹かれ、今回の記事執筆へと至った。
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入学時、彼は身長176cm.体重53kgの、
いわゆる《ガリガリ》。そんな彼が選んだポジションはFOだった。
当初、フェンシングで培った動体視力を活用できるゴーリーを視野に入れるも、同期に既に3人候補がいたため断念。ラクロスという団体競技の中でも、特に個人スポーツに近い、FOというポジションに惹かれた。
FOerとして出た初の練習試合で勝ち、自らのセンスを感じた。2年にして出場したリーグ戦では、直接対決では負けたものの、その後ATと挟んでポゼッションを奪い、得点につなげた。FOと彼の相性は抜群だった。武者修行などで仲良くなり、互いに刺激しあっている他大学のFOerと戦って勝つととても心地が良いという。
彼はSERPENTS内の誰よりも《勝ち》へのこだわりが強い。自分一人が注目を浴びることにこだわりはない。自分も勝ち、チームも勝つこと、それが彼にとっての全てだ。
「負けるのはダサい。勝たなきゃ意味ない」
今年の体制を決めるためのミーティングで、運営にも力を入れることを主張する意見が多い中、彼は強い口調で言いきった。
そんな彼の憧れであり、意識している人は、2018年卒のFOer、日比野聡太さん(#39)だ。彼も中島と同じく1年生の頃からFOを専門とし、2017リーグで大活躍をした。実際にその年、SERPENTSは関東ベスト4となった。
一緒に行った試合で負けたところを見たことがない。その《強さ》に憧れた。
「強くなりたい」
その想いから1年生の秋、自ら45cm×45cmの人工芝を購入し、下宿先のアパートで、毎日のように自主練に励んだ。(当時クレジットカードを持っていなかったため、友人に頼み、友人宅から自転車のカゴに乗せて持ち帰ったそうだ)
(中島が所有する45cm×45cmの人工芝,
2019年5月8日本人撮影@本人宅)
同期の日本代表FOerは、《筋肉強者》《反応強者》といった特長をもつ。一方で彼は、特に秀でている特長を持つわけではない。だからこそ、幅広く様々な技術を磨く必要があったのだ。そうして迎えた、2018シーズン。 中島は3年ながらFO1枚目となる。リーグ戦前最後の練習試合。相手は東京大学、当時4年#66星名辰信選手。反応の速さに圧倒された。
「完敗だった」
試合前、良いイメージを持って取り組んだだけにどうすればいいのか、迷走した。
「筋力体重をあげる」
そう宣言した彼に大きな出来事が起きた。
《中島拓海増量計画》
ガリガリな彼を待ち受けていた増量計画とはー。その内容はまた来週。