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2019

蕏塚さやかのSERPENTS図鑑vol.6 山内凌太

ベンチ、そこに一歩入ると豹変する山内凌太。その小さな背中は何を語るのか。



ラクロス部の練習中。ランメニューで選手達が走っている中に、一回り小さい華奢な身体で一生懸命走る姿があった。3年STF(スタッフ)山内凌太。SERPENTSのSTF組織は、怪我をしてプレーができなくなった選手やMGから転向する人々が多い中、彼は唯一新歓初期から、選手としてではなく、STFとして入部することを志望した男だ。中高はサッカーをやり、運動は好きだし、身体は健康そのもの。そんな彼がSTFとなり、今思うこととは。


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前述した通り、中学高校ではサッカー部に属し、選手として活躍していた。高3、引退前最後の大会である春の全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会で、地区予選を突破。7年ぶりとなる都大会出場を果たした。その時のチームの一体感、達成感が忘れられなかった。あの気持ち良さを、また感じたい。大学入学後は体育会だけを見て回っていた。そこまで強く新歓を受けた記憶はないが、気づくとSERPENTSだけを見るようになっていた。理由はわからない。直感だった。だが、すぐに入部を決めたわけではない。


「体育会に入りたい気持ちは漠然とあったんですけど、いざ入るってなると勇気が出なかったんですよね」


そんな彼が入部したのは、GWが開けた後だった。最初からスタッフとして入ってくる新入生は初めてだったため、みんなの注目の的だった。

選手じゃなくてスタッフだった理由を尋ねた。今まで何人もの人に聞かれたけれど、きちんと答えられたことがないという。


「自分に自信がなかったからかも。人数が多いのは魅力である一方、全員が活躍できるわけではない。サッカーはやってたから何とか出来るけど、運動神経が全然ないから、ほかのスポーツはさっぱり。ボールを投げてもどこかぎこちないと馬鹿にされる。体力測定のソフトボール投げとかも嫌でした。まあ一時的な不安とかで逃げちゃった、ということかもしれないですね」


現在のSERPENTSのSTFの主な仕事は、アナライジングや練習のメニュー管理、試合中のフライ管理や審判だ。ラクロスが好きだからこそ、データ分析ができる、と4年STF長塚田拓望は言う。ただ、1年のうちはまだラクロス理解も浅く、育成コーチの方々が付いてくれるため、STFのやることは、ほとんどない。練習中はグラウンドにいて、ビデオ落としたり、ボールアップ手伝ったり。試合中は、ベンチ入りはするものの、「フライ管理」は形だけ。つまらなかった。


「ベンチで何もできなかったって、そう感じてました」


その年、新人戦サマー、ウィンターと続き、ウィンターでは決勝に進出。だが、どこか他人事に感じ、決勝進出を喜び合うチームの輪には入れなかった。

1年のシーズンオフの期間が待ち遠しく感じ、オフ期間はラクロスのことを考えることを遠ざけた。そんな冬を越した、キックオフ。

STFがアナライジングを本格的に始める方針が決定。様々な取り組みが導入された。



「新しいことが始まるのかってワクワクしました」


現在は人数の関係上、グラウンドにSTFが必要であり、アナライジングを行えていない。実際にアナライジングに関わる機会は少なかった。彼はアナライジング以外で、部活へのモチベーションの糸口を探った。

選手が走っているランメニューをただグラウンドに突っ立って見ている、そんな自分の姿に嫌気が差し、選手と共に走るようになった。

また、3級審判資格を取得し、何回か試合経験を積んだ彼は、2018年5月。プレシーズンリーグトーナメントに審判員として参加した。そこで初めて、公式ラクロス審判員が着用する、審判着(通称ゼブラ)を着る。


「あのゼブラ、初めて着たけど、あれを着るとすごく締まるというか、そんな感じがしました。そして、2級以上の方々は本当にかっこいい。声やシグナル、動作など憧れました。審判の楽しさを感じ、大げさなようだけど、人生が変わった」


3級から2級への昇級希望が強まり、審判活動により力を入れるようになった。その結果、今年3月末に晴れて昇級を果たし、憧れの審判員に一歩近づいた気がした。

審判は確かに楽しい。奥が深くて考えることがたくさんあるからだ。

だがその一方で本当はアナライジングにもっと関わりたい。それが本音だ。そんな想いを抱きながらも、現状を理解し、自分ができることを模索している。


「去年ベンチ入りしてたBリーグの試合で負けた時、それまであんまり感じてなかったんですけど、そこで、勝ちに対する考え方が変わったんですよね。自分がやっていることが勝つことに繋がっているかって感じることは難しいけど、そこへの目線は常に持っていなければならないと思ってるんです。負けてから、それはいつも感じてますね」


それまでは日々の業務に追われ、考える暇もなかった。だがその「負け」が彼の中の「勝ちへのこだわり」を喚起した。


彼はとても温和な性格で、普段怒ることは滅多にない。だがベンチに立つと彼は、豹変する。声を荒げ、時に持っているボードを地面に叩きつける場面も。冷静に指示を出し続けたい思いはあるのに、感情的になってしまう。


「自分のミスを受け入れて次に切り替えられないのが悩みです。その場の状況に集中できなくなってしまう」


また、試合に負けているとその悪い雰囲気に呑まれて切り替えられない。マイナスの空気に対して何もできない自分。


「試合中に崩れていくチームに対して、ただ見届けるだけの自分。すごく悲しかったです。その状態を変えるだけの力がない、限界があるのかなって思いました」


今年からリーグ戦のベンチ入りをするがその不安は大きい。


「不安しかないです、歩けてないんじゃないかなって」


そんな風に不安を語る彼に、先輩STF、4年塚田拓望は言う。


《ミスしたらまずは人のせいにしたらいい。あとでしっかりと自分で反省したらいい》


ベンチに立つ彼は今年どのように豹変するのか。

リーグ戦当日、ぎこちない歩き方をしている彼を見かけたら、ぜひこう声をかけてあげてほしい。

「上げて下げて、山内!」

(文責:4年MG蕏塚さやか)


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